SCENE11 キャリアに応じた人材教育のコツ ミドルマネジメントを育てることも大切

 「職員を早く一人前に」「より高度な技術の取得」といった課題は、どの病院のどの部門でも同じであろう。日進月歩である医療技術と、効率化を進めようとする国の医療政策は、医療従事者に日々の研鑽を望んでいる。病院における教育とは何か、人材を「人財」とする具体策はあるのかについて考える。

 奈須と七瀬が、4月に入職する新人と中途採用者の教育をどのようにするのか話し合っている。看護部としてプリセプター制をとっていない日本総合病院では、教育は各病棟に任されている。2人は入職者の教育の方針と具体案について、以前から話し合っていた。

七瀬:奈須師長、新人はプリセプターをつけた方がいいのではないでしょうか。うちの病院では、プリセプター制度をとっていなので、この病棟で実験的にプリセプター[1]を新人につけてみて、看護研究で発表してみてはいかがでしょうか?

奈須:そうね。それはいい案ね。それでは、プリセプターの役割を明確にしてね。

七瀬:分かりました。

奈須:次は、教育計画ね。以前、説明した教育クリティカルパス(図13)(病棟経営数字18.効果的に新人教育をするために)を覚えている?それを基に作ってほしいんだけど。

七瀬:覚えています。縦軸に知識や技術、横軸に時間が書き込むというものですね。了解です。

―根田師長と教育について相談する。

奈須:根田師長、うちの病棟の七瀬さんが、プリセプターの導入について看護研究で発表する予定です。

根田:色々、思考錯誤しているわね。

奈須:ちょっと相談なんですが、これから教育の教育は、さまざまなステージによって変えて行かなければならないと思うのですが、いかがでしょうか?

根田:そうなのよ。スタッフの成長に合わせて教育計画を作成する必要があるのよね。例えば、看護師として専門を極めたい人は、認定看護師を目指したり看護を勉強していくし、管理職として成功したい人は、管理の勉強をしていくことになる。そうするとすべての職員が同じ教育を受けることはおかしいよね。斎藤看護部長がよく話をする看護師のキャリアの分かれ道よね。(病棟経営数字1.

奈須:私も初めてキャリアの選択をしなければならなくなった時は、悩みました。看護師になった時には、考えもしなかったことでした。

根田:だから、エキスパートナースを目指す人と管理職として極めようとする人では、教育を分ける必要があるとも言えるわね。簡単に説明すると表(表2)のように新人であれば、「病院や看護部の理念や方針の習得」「礼儀・作法」「看護技術」「組織行動や規範」が最重要課題となり、「看護過程」をきちんと理解してアセスメント力をつけて患者さんの個々に応じた看護計画が立案できるようになれば、いいと思うの。中堅は「看護技術」や「組織行動や規範」「看護過程」を重点的に教育されることで、質の高い看護が提供できるはずよ。管理職より、看護実践のエキスパートとしてのキャリアを望む看護師は、「看護過程」「看護研究や開発、より高度な専門性の習得」を行っていってもらうことにより、次元の違うさらに高度な看護を提供できるようになるはずね。管理職は、「組織管理」を重点的に学んでもらうことにより、病棟などが組織としてレベルの高い看護を提供することができるようになるはずね。さまざまな病院で、教育システムきちんとしていけど、管理職の教育が課題となっているわね。

奈須:そうなんですか。確かに、私も試行錯誤で管理者になってきている気がします。管理者になる前に管理を学んだわけでもないですし、管理者の教育とはどうあるべきか興味あります。

根田:病院としても、ミドルマネジャーの教育をどうすべきか考えている最中みたいなの。奈須さんの経験を生かして、教育システムを作ってくれと依頼されるかもね。私もがんばるから一緒にやろうね。

奈須:分かりました。

 元気な病院や病院グループの特徴は、ミドルマネジメントへの教育投資を惜しまないという特徴があります。近年、業績が伸びている元気な病院は、ミドルマネジメントが元気なのです。元気なミドルマネジメントを育てる上で重要なのは、管理者教育を充実させることではないでしょうか。これから、教育計画を作る時は、ミドルマネジメント教育のカリキュラムをしっかり盛り込むことをお勧めします。ミドルマネジメントしっかり管理をして、現場の雰囲気をよくすることで、看護の質と効率を高め、病院経営に貢献します。